【銘柄研究】オイシックス・ラ・大地(3182)

オイシックス 銘柄研究
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有機・無添加の「安心・安全」に配慮した食品のインターネット通販を行う会社。
  2016年に「大地を守る会」、今年「らでゅっしゅぼーや」と経営統合


▼オイシックスドット大地(3182)

《保育園のお迎えは夕食の買い物をしてから行ってはいけない》事をご存知でしょうか?

 保育所は、【親が就労している時間+通勤時間】に預かるという定義なので、買い物は
 その他の時間枠になり、【お迎え→買い物】という順序でないとNGになる事業者が殆どです。

 これではまともに買い物もいけず、栄養バランスを考慮した献立は困難です。

 ↑これはひとつの事例なのですが、
 《未就学児有り+共働き世帯》の生活スケジュールはのっぴきならない所まできています。
 共働き世帯はとにかく【時短】、それもクオリティの高い【時短】を求めており、
 そのためには多少のコストは惜しまない・・・。
 ドラム式洗濯機、ヘルシオホットクック自動調理鍋などの最新家電トレンドを紐解いてみても
 そういった家庭が急速に増えてきていることが如実にわかります。

ヘルシオドラム式洗濯機

子育て世帯数(児童のいる世帯数)は1996年には【1,388万世帯】だったのが、2015年には
【1,182万世帯】へと15%減少しています。
その反面、共働き世帯数は1996年には【555万世帯】だったのが、2015年には【659万世帯】へと18%増加しています。(厚生労働省調べ)

この趨勢はますます加速していくでしょうし、このセグメントへのソリューションを提供していく
企業への社会的ニーズもますます高まっていくものと思います。

現状、オイシックス(Oisix)が攻めているセグメントは、まさに“ココ”であり、現況マーケット母数も
ここです。

そして、オイシックス(Oisix)を語る上で欠かせないのが【ミールキット市場】であり、catalystもこの周辺に散らばっています。

 

【ミールキット】:
 献立を調理するのに必要な具材一式がセットになったもの。
 必要な肉、野菜などが最終工程まで下ごしらえされており、必要な分量の調味料と
 レシピが同梱されており、短時間で食卓にならぶように工夫されている。
 ネット通販の新たなサブスクリプションモデルともいえる。



■海外ミールキット市場~

 ミールキット市場を語る上で抑えておくべきは米国マーケットであり、このマーケットから将来のトレンドを推し量る必要があります。

2012年8月ミールキット市場の旗手BlueApron(APRN)が創業し、やおらマーケットが盛り上がります。
同月、ライバルとなるドイツ企業のHelloFresh SE(Xetra)が北米事業を開始しています。
その後、共働きのミレニアム世代を中心に市場拡大が続き、新規企業の参入が続きました。
2016年には150社まで事業者が増加しています。

昨年9月、業界4番手のPlated(プレーテッド)は米国SM(スーパーマーケット)大手Albertsons(NYSE:ABS)の
100%子会社となりました。
https://www.albertsons.com/albertsons-companies-acquires-plated-to-transform-the-food-experience-for-consumers/

今年3月には、HelloFresh SE(Xetra)がgreenchef(グリーンシェフ)を買収しトップシェアを握ります。
http://fortune.com/2018/03/20/hellofresh-buys-organic-green-chef/

さらにその後、5月にはSM大手:Kroger(NYSE:KR)が業界3番手のHomeChef(ホームシェフ)を買収。
https://www.prnewswire.com/news-releases/kroger-completes-merger-with-home-chef-300670978.html

ここにきて、激しいM&Aの波が到来しています。


【2018年米国市場シェア】:
 ハローフレッシュ(HelloFresh) 36.00%
 ブルーエプロン(Blue Apron) 35.00%
 ホームシェフ(Home Chef) 13.00%
 サンバスケット(Sun Basket) 10.00%
 プレーテッド(Plated) 7.00%
 (%=市場シェア)

このように、じわじわと上位2社+HomeChef(ホームシェフ)という趨勢になりつつありますが、
これからも、時間を買う意味での中規模のM&A(SM参入)は続いていくものと思われます。


ハローフレッシュ(hellofresh)に後塵を拝したBlueApron(APRN)については、今年に入って買収の噂がたえません。。。

というのも、ミールキット市場の拡大は同時にSM(スーパーマーケット)での総購買額の減少に繋がり、既存SM会社にとっては看過できる状況ではありません。

米国のMealKit市場は、2017年は50億ドル、2018~2022年で年率成長率21%と高成長が予測されています。
(TechNavio調べ)
別のデータでは2021年世界市場規模は2016年の約3倍となっています。

高成長のマーケットに否応無く乗り出さざるを得ないのですが、別段、競合していくというスタイルだけではなく、これからのトレンドとして、提携・買収した親SM店舗にミールキットが陳列されていく風景も増えるはずで 新たなチャネル獲得に繋がり、食品販売全体の市場規模拡大に寄与する可能性は大いにあります。


■国内ミールキット市場

ドラスティックに動いてる米国市場と比較すると、国内ミールキット市場はまだまだ平穏な動きですが
今年がターニングポイントになりそうな雰囲気があります。

【主な日本国内プレイヤー】

  1. ・Oisix
  2. ・タイヘイ#老舗
  3. ・パルシステム
  4. ・ヨシケイ#老舗、宅配のパイオニア
  5. ・セブンミール #アスクルと業務提携
  6. ・AMAZONフレッシュ
  7. ・ロックフィールド
  8. ・イオンリテール など・・。

[ミールキット参入動向]
2017/10 セブン&アイHD【IYフレッシュ】
2018/2 Amazonフレッシュ(Kit Oisixも提供)
2018/3 イオンリテール
2018/4 相鉄ローゼン
2018/6 フードスクエアカスミ

昨年~今年にかけてEC→SM(スーパーマーケット)への拡大基調が続いています。
今のところ流通インフラが整っている首都圏SMが多いです。

AmazonもAmazonフレッシュカテゴリ内で厳選サプライヤーのブランドミールキットを展開していますが、これも首都圏限定のサービスです。
 ・Oisix
 ・タイヘイ
 ・デリア食品
 ・RF1 #Rフィールド(2910)のサラダブランド
4ブランドを展開しています。

これが3大都市~全国に拡大していく時がマーケットがレンジブレイクアウトする時だと考えています。

矢野経済研究所によると、2017年度の食品販売の市場規模は、約3兆6000億円の見通しであり 12年度に比べて約3割拡大しているそうですが、そのうちEC化しているものは1%、2%程度といわれています。
つまり立ち上がりにすぎないというのが大局の見方です。
まだまだこれからなんです。


■オイシックス・ラ・大地(3182)の展開~


corporateaktion:
 2016/12/22 オイシックス株式会社と株式会社大地を守る会の経営統合(株式交換)
 2018/01/30 NTTドコモとミールキット事業に向けた業務資本提携を合意
           同時にドコモグループのらでぃっしゅぼーやを取得
 2018/02/28 ドコモよりらでぃっしゅぼーや社の株式100%を譲受け
 2018/03/01 らでぃっしゅぼーや業績連結(2019/3期)
 2018/06/27 オイシックス・ラ・大地(株)へ社名変更
 2018/10/01 合併による経営統合
[海外展開]
2017/9start
中国法人「上海愛宜食食品貿易有限公司」を設立
https://www.excite.co.jp/News/release/20171012/Prtimes_2017-10-12-8895-210.html
2017/11
限定的なサービスローンチ
2018年度~
本格展開予定。


[宅配事業]~Oisix~  44% 【商品開発力とブランディングが巧み 顧客獲得チャネルが豊富】
[宅配事業]~大地を守る会~ 18% 【安心安全食材提供できる提携農家に強み 野菜に強い】
[宅配事業]~らでぃっしゅぼーや~ 37% 【安心安全食材提供できる提携農家 ドコモ高値掴みでOisixへ】
 (%=売上比率)

食のインフラ

提携生産農家、オイシックス大地2700人、らでぃっしゅぼーや2400人。
これで3社総合で、5100人の生産者を抱える事になります。
これの意味は果てしなく大きいです。

ミールキットモデルは需要に対してどれだけ安定的に供給できるかがカーネルになります。
生産ラインがボトムネックで大規模事業者が存在しない国内市場の中で事業規模拡大の素地が完成したと捉えるのが正しいと思います。

オイシックス・ラ・大地(3182)のメインターゲットは30代~40代、共働き、未就学児の子供を持つ親中心です。
単身向け、シニア向けは現在では考えておらず、あくまで子育て世帯にターゲット。

どちらかというとシニア層が多い「大地の会」、幅広い顧客層の「らでぃっしゅぼーや」

完全にオールラウンドなセグメントへの棲み分けが完成しています。

キットオイシックス

私はかねてから、Oisix自体、子育て世代で圧倒的なシェアとブランド力を獲得した後、チャネル拡大→他セグメント攻略へ進むものだと勝手に思い込んでいた為、パズルのピースが噛み合った見事な経営統合だというしかないです。

catalystのミールキット「Kit Oisix(キット オイシックス)」は、13年7月の発売以来、コース利用会員数、累計販売数ともに右肩上がりで、18年3月末には会員7万1000人、18年5月には累計出荷個数が1000万キット。
【共働き世帯数】にプロットしてみても指数関数的な伸びになっています。

「2品で20分」 「クイック10」「手仕事シリーズ」「シェフ」「デイリー」「キッズ」など商品展開も増やしています。
これは米国市場でマーサーマーレイスプーン等各社ブランディングでの市場の棲み分けが進んでいるところからも王道的商品展開の仕方だと思います。

後は、「賞味期限が短い」というミールキットのWEAKPOINTを解決する冷凍・フリーズドライ商品の開発・展開も進んでいく事と思われます。

18/3 ローソン、ネットスーパー店舗受け取りサービス「ローソンフレッシュピック」でのKit Oisix取り扱い開始
18/6 「AMAZONフレッシュ」 販売開始
今後、移動販売、オフィス販売実験 と着々と地歩を固めています。

価格は2~3人前980円価格帯が最安でボリュームゾーンがおよそ1200~1300円となり、他社と比較し若干高めの値段設定ですが、、世界マーケットの標準的な価格帯からは遥かに低廉で提供されています。
(BlueApron(APRN)は2人前コースで1食あたり9.99ドル、4人前コースで7.49ドル、Kroger(NYSE:KR)は
7.99ドル最安。2人前14ドル~20ドル目安。)

定期購読(サブスクリプション)者は「おいしっくすくらぶ」加入前提として、送料割引の恩恵が受けられるのが、およそ4,500円以上で6,000円以上は一律100円になる事から、定期購読者は週当たり6,000円~×4weekの24,000円以上のARPUが理想的なモデルだと思われます。

現状は週当たり6,000円×2weekの12,000円近辺なので伸び代は大きそうです。
さらに、提携先の実店舗での販売(サブスクリプション以外)チャネルは拡大していく事からミールキット事業の拡大は必至でしょう。

あとは、サブスクリプションモデルのカーネルである【高継続率】をいかに高める施策を打てるか動向に注目しています。

「カゴメのトマトジュースは、一年に一本以上飲む人は日本人の4人に1人だけれど、全人口の5%くらいの人はライフサイクルに組み込んでしまうので、一生のみ続ける」と耳にした記憶があります。

顧客とのチャネルをさらに増やしていき、囲い込んだ後、生活サイクルに組み込まれるまで「クオリティの高い時短」商品サービスで愚直にアクションを起こし続ける事で、食品サブスクリプションの果実は長い収穫の時期を迎える事でしょう。

水面下の動き

今後参入してくるSMは既ミールキット事業者と提携or買収戦略をとらざるを得ないと予想しています。
確たる事はいえませんが、未上場のミールキット提供会社には、そういった話(提携・買収)は多く来ているのではないでしょうか。

とはいえオイシックス・ラ・大地(3182)の卓越したスピード感とビジネス巧者ぶりを鑑みるならば、大手SM、CVSのPB(プライベートブランド)で、内実は、生産・開発オイシックス・ラ・大地(3182)という業務提携コラボレーションスタイルが増えていくと予想します。
とりわけコンビニ大手は最終的にそういうスタイルになると思います。

農産生産者5100人という圧倒的な生産ネットワークを抱える強みは大きいと思います。
このインフラを突き崩すのは新規参入CVS・SMでは、きわめて難しいと思います。

もし仮にオイシックス・ラ・大地(3182)にBlueApron(APRN)同様、買収アクションが入ったとして規模感からいってもAMAZONくらいではないでしょうか。

■まとめ

「ミールキット」市場は大きなポテンシャルを秘めています。
海外では「ミールキット」が大きなビジネスチャンスであることが急速に認知され参入企業が増え続けています。
しかしながら、圧倒的な巨人はいまだ見当たらず、合従連衡や淘汰が繰り返されています。

日本国内は海外の動きとは離れた小規模で独立的な動きでしたが、Oisixと大地、らでぃっしゅぼーやが経営統合し市場presenceが一気に高まった事でマーケットメーカーになる可能性が俄然高まりました。
それを株式市場が察知し織り込みはじめる日は近いと考えます。

オイシックス・ラ・大地(3182)のpricesetting・Lineup、corporateactionをひとつひとつ吟味していくと、世界マーケットを見据え周密に研究し、如才なく行動している事に畏怖の念すら覚えます。

かつてネットでレシピを検索できるクックパッド(2193)が隆盛をきわめましたが、時代のニーズは、「時短」となり、全工程を1分程度でみられる動画レシピ
サイト「DELISH KITCHEN」「クラシル」などに人気が移りました。
現に、ヤフーは、「クラシル」のdelyを93億円で連結子会社化、「DELISH KITCHEN」は伊藤忠商事を引受先として20億6000万の調達に成功しています。

時短ニーズの到達点にあるのが「ミールキット」だと考えます。

オイシックス・ラ・大地(3182)は、近いうちにマザーズから東証一部に指定替えし、日本を代表するグローバルストックになると思います。

高島社長は売り上げ1,000億がスタート地点だと明言しています。
(19年03期会社予想で610億)

まだ黒字転換してないハローフレッシュ(hellofresh)がフランクフルト市場で円ベース時価総額2300~2400億円をつけていること。

オイシックス・ラ・大地(3182)はすでに安定的にキャッシュフローを生み出しつつ、すでに日本国内のミールキット市場の支配権を握っている事。
BlueApron(APRN)が躓いている生産・流通ネットワーク分野ですでに安定供給のベースができている事。

今期以降の海外事業への期待値+進捗度も勘案して、株価は【9000円~12000円】あたりに向かって
ゆっくりと評価されていくものと考えています。

ロングスパンでチェックしていきたい企業です。